吉村昭の三陸海岸大津波と羆嵐 2015年04月21日

kishin
“kishin by itsumademo tanoshimi~, on Flickr”

吉村昭の三陸大津波を読んでいる。飾り気のない吉村昭の淡々とした語り口がNHKの冷静なドキュメンタリー番組の語りみたいで良い。

しかし読み物を読んで、三陸大津波の想像を絶する地獄絵図を頭に思い描く、という事もすでに今は現実として起こってしまいyoutubeでいつでも何回も見直す事が出来る世の中。。。

想像を絶するその景色でさえ手の中のスマートフォンで再生される環境を持ってるのでありますな。我々は。

だから不謹慎承知で言うと2011年まではドキドキした感覚で半分野次馬感覚で読めた本だろうが、今はもう現実の映像があるわけで頭の中の想像でドキドキすることは半減している。911のジェット機自爆テロ、311の津波で自分たちが生活する街が映画のように壊滅的に破壊される映像を見て、想像を絶する世界というのは具体的に少なくなってきていて、これだけ現実の衝撃映像がある中で映画が辛気臭く思えるのはしょうがないことかも。

そう考えると、映画や他の映像作品でも描かれていないもの、それこそ同じく吉村昭が描いた肉食動物・草食動物の世界よろしく生きたまま食べられる人間。今これ以上の場面はないはずですな。

だからあの「羆嵐」をあれだけの没入感を持って読めたのかという事が後になってわかったのです。。

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羆嵐
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↑ 魚影の群れも吉村昭か。。。

羆嵐 – 吉村 昭 2015年04月14日

07

ひょんなことから日本の獣害史上最悪と言われている北海道は苫前の三ヶ別羆事件をテーマにした本小説を読んだ。

三毛別羆事件 – Wikipedia

だいたいこのWikiを読めば経緯やその被害の大きさ、羆の残忍さがひとしきり把握できるんだが、この小説にはもっと事細かにその
極限の状態が描かれている。

羆嵐
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羆を退治しなければ入植してきた自分たちの土地を手放すことになる
人間がまともに太刀打ちできるレベルの獣ではない
下手に動くと退治するどころか自分が羆の餌になる

という条件下で隣接の村や警察などに支援要請をして集まる人々の人間模様、一人で生きてるマタギの孤独な戦いなど、詳細の描写がさらに緊迫感を与えて最後まで読む手が止まらないのであります。

暗闇の中、草壁の裂けた家の中に羆が居る、中の被害者が羆に襲われ、生きたまま食われて肉を貪る音、骨を噛み砕く音だけが聞こえる。迂闊に立ち入るとたちまち自分も餌になってしまう。。。

集団で集まっては猟自慢をし、集団と銃の数に安心しきる隣接の村の支援者たちが実際の羆の大きさを見た途端にひるんで逃げ出し、数丁の銃しか持たない住民たちと何も変わらないこと、羆は大人数では殺せない、気配を殺して至近距離まで近寄り、急所を撃ち抜くしかない、外れれば驚いた羆に襲われて一巻の終わり、それがわかってようともひるみもせずにしっかりと自分の背に負って羆を撃ち抜くマタギなど。超絶的な緊迫感です。

肉食動物のお食事 2015年03月05日
ラープルアットは自然生肉食の味? 2012年10月14日

以前も肉食動物のお食事映像を載せたりしてましたが、これもまた自然の残酷な一面ですな。人間といえども動物。大自然の中では
このように食物連鎖の輪に組み入れられてしまうこともあるのですな。動物ならまだ見ていられるが、人間が生きたまま腹を割かれて大腿の筋肉や内臓を食われるなんてのはどれほどの苦痛が伴うのだろう??想像もできんな。。