佐々木俊尚氏 キャリアについてのお話 2013年02月24日

Working in Rimini
“Working in Rimini” photo by Quasimondo

佐々木俊尚氏のメルマガを契約して毎週読んでいるんだが、以前のメルマガでちょっと面白い記事があった。この記事は2013年1月21日に配信された(メルマガは毎週月曜配信)もので、トップ記事はfacebookのグラフ検索に関しての記事だが、個人的には2つめの記事で述べられていた内容がとても印象に残った。ちょっと時間が経ってしまったけどとりあえずちょっと紹介。

佐々木俊尚氏がとあるインタービューの中で「仕事をどう選ぶ」という問に対して自分がどうやって今の仕事をしていくようになったのかをなったのかを述べているんだけど、いろいろなメッセージがあってほとんどの内容に個人的に大賛成なんである。大賛成というだけなら話がここで終わるのでもうちょっと解説します。

日本の会社ってジェネラリスト養成型が多くて、社員に何でもやらせようとします。入社して企画の仕事をしていたら、「一度現場も見てこい」なんて言われて営業に異動して、また企画に戻ったかと思えば、今度は総務に行かされたりする。そういう「ひと通り見てこい」みたいなことって、実際はあまり意味がないと僕は思います。

中略

ただ問題なのは、たいていはその「ひと通り」のスパンが長いんです。大企業の場合は20年くらいかかったりする。そこから幹部になったり、起業できればいいけれど、計画通りに行かないことも十分あり得る。そうなったときに残るのは、中途半端な経験だけ。専門性が蓄積されていないので、リストラや倒産など転職せざる状況になった時につぶしが効きません。

自分の20年後につぶしが効かなくなったりしなくならないよう、専門分野を決めることが大切という。社会に出たら自分はどこの分野でメシを食うのかを決めないといけない、氏が新聞社で記者をやってる時代は終身雇用もまだ説得力を持っていた時代だったから、専門性の重要性を感じたのはIT系の記者になってからだとのこと。

ところが、いざIT系の雑誌編集部に飛び込んでみると、コンピュータやインターネットの技術や製品について詳しい人は山ほどいるわけですよ。がく然としましたが、いろいろな仕事をしているうちに、ちょうどそのころ頻繁に起き始めたインターネット犯罪については、取材手法を知る人が編集部に誰もいないことがわかりました。そこで、新聞記者時代に培った人脈やノウハウを使って「迷惑メールの帝王の素顔」というようなアンダーグラウンドの記事を書いたら、読者から大きな反響があったんです。

氏の場合、ITの専門性の部分とそれまでの経験で積み上げた人脈などを駆使して法や警察、犯罪といった専門性の部分も掛けあわせて他の人では中々真似できない記事を書くことができるようになったようです。

仕事もそうですが、私たちの生活がテクノロジーでどう変わっていくか。単にツールとして生活を便利にするという話ではなく、社会構造そのもの、世の中の概念や仕組みにテクノロジーがどのような影響を与えていくかを描いていく。それがジャーナリストとしての僕の立ち位置です。では、なぜ描き続けるのかというと、見てみたいんです。自分で「世の中がこうなる」という未来予測を立て、それがどうなるのかを知りたい。仕事を続けるということは、そういう面白さがあります。

このくだりは仕事に対するモチベーションの根本ですな。今の御時世、「仕事するぞ」と言って業務時間内に机に座ってる間だけが仕事というものではなく、プライベートの時間も含めオンラインになっている時間も長いし、すべてが自分の仕事やアイデンティティに関わってくる。そんな中で仕事する根本の気持ちの持ちようみたいなものですな。やっぱ基本的には好きなことを仕事にしないと始まらない。大学生の時に1日8時間、働いているということは1日の1/3を仕事に費やしてるわけだから、嫌な仕事を嫌々やってられない、という理由で自分の好きな仕事を探して良かったと思える。

インターネット犯罪の取材に端を発し、その後はテクノロジーが社会をどう変えていくのかをテーマにジャーナリストとして活動してきました。読者のニーズは高いテーマですが、テクノロジーと社会、それぞれについては語れても、その接点を追い続けてきた人というのはそう多くはありません。独立して10年になりますが、ここまでやってこられたのは専門性があったことに加え、その専門性にニーズがあったからだと思います。専門性というのはニッチすぎるとニーズがなくて仕事になりません。だから、ニーズを見極めながら自分の専門性を高めていくということが大事なんです。

氏は専門性もニッチにならず世の中のニーズを見ながら自分の専門性を高めていかないといけないとも言っている。まあね、そりゃあ今のインターネット全盛の世の中でいくらすごい技術者だからと言ったって「有線の電話技師です!」と言ったってそもそもそんなに商売の話もなかろうと言うものだろうし。その世の中のニーズにあった専門性を探していくのもトライアンドエラーでいろいろやってみてうまくいくようなら進めてみる、というようなやりかたで見つけていくしかないと。だから若手にいろんなことをやらせてくれる会社を選ぶのもまた良いかもという話。

常にビジネスを開拓しなければいけないというのは、もちろん会社員も同じです。ただ、フリーランスは収入がいつ途切れるかわからないから、それがある種の原動力になって日常に埋没しないでいられるというのは実感しています。よく「不安じゃないですか?」と聞かれますが、今の時代、不安じゃない人なんていない。むしろ、フリーランスというのは会社員と違って収入源が複数ですから、リスクヘッジになります。何が安全かわからない時代ですから、安全性を基準に仕事を選ぶという行為はもはや無効ではないでしょうか。

サラリーマンだって将来同じような条件で働けるかどうか、って不安は常にあるものだし、もしいきなり裸で明日ほっぽり出された時などにどうするか、というような例えの話でもある程度の回答を用意しておかないと、こっから先はホントに何があるかわからん。海外に住んでいるとVISAの問題などもあるし、さらには日本本体が今の現状どんどん先細りしてるように見えるから。

もうひとつ言うと、個人的には目が見えなくなったり、歩けなくなったりというような加齢とともに発生する身体の障害に対する備え、こうなった時にも自分は働く口があるのかということも最近は頭をよくよぎる。この回答はほとんどインターネットの向こうにしかないような気がします。やっぱりネット上のサービス業か、ネット上のコンテンツを扱う仕事。最悪指一本でも仕事は可能だと思うので。

コンピュータやインターネットが発達して、先進国の単純労働を機械や賃金の安い外国人労働者が奪い、仕事の選択肢が先細りすることもあれば、ネット上のサービスのように新たな仕事やビジネスが増えたりもしてるわけで、この技術の発展は人を幸せにも不幸にもしてるわけですがそういう構図がわかってるならじっくり先読みをしながら、なんとかその、幸せのほうに乗っかりたいと思うわけです。

でも先の氏の立ち回り方のように、ひとつの専門性を軸にしてそれまで自分のいろいろ寄り道をしてきた経験から来る他の専門性を掛けあわせた仕事のやり方、これこそ他の人には真似しにくい強みになるんじゃないかと。だからあくまで専門性を軸にした経験の豊富さ、人脈の多さでどれだけ独自性のあるスタンスが取れるかが決まってくるような気がしますな。基本的には常に実践実践!ということなんか。ちょっとこういうことを頭に置きながら日頃の生活の仕方をもっかい考えてみようと思ったりしております。

佐々木俊尚 公式サイト
有料メールマガジンのご案内 佐々木俊尚の未来地図レポート
まぐまぐ! 佐々木俊尚の未来地図レポート
↑ こちら佐々木俊尚氏のメルマガ。コンピュータやネットで実現するちょっと先の未来を想像する、というのが楽しい人にはとてもおすすめ。毎週月曜配信、月額1,000円。

追記

人の文章を引用してこういう文章を書いていくってのは難しいもんですな。ほとんど1段落まるごと引用と変わらないぐらいになってしまった。。。。でも書くんだよ!書かないことにはうまくならない。