民主主義はもういらない、あなたのための全体主義 国民クイズ 2012年08月30日

先のブックスキャンのエントリで電子化を依頼していた本がこれ。久しぶりに上下巻とも通し読みしました。

日本国憲法第12章 国民クイズ(国民クイズの地位)
第104条「国民クイズは国権の最高機関であり、その決定は国権の最高意思、最高法規として、行政・立法・司法、その他ありとあらゆるものに絶対・無制限に優先する。本憲法もその例外ではない。」

近未来、日本は民主主義を捨て、国民一人一人がクイズ番組での合格によって特権を勝ち取る異形の全体主義国家となっていた。テレビ番組「国民クイズ」は「民主主義はもういらない、あなたのための全体主義」、「4時間の合法的な革命」、「ギブ・ザ・ピープル」をテーマに暴走の一途を辿る。主人公のK井K一は、TV番組にして最高権力機関である「国民クイズ」の人気司会者。ところが彼は刑務所住まいだった。かつて、彼は売れない役者だったときに国民クイズに出て失格し、罰ゲームの強制労働として司会をやらされていたためである。複雑な事情に流される別れた妻と娘の気持ちをよそに、皮肉にも有名かつ超人気司会者となり日々の番組をこなし続ける。ある日、娘に会うために脱走したK一は、娘を人質に国民クイズ体制崩壊計画への手助けを迫る佐渡島共和国の工作員と、そして、待遇の改善と家族との面会を随時許可するというクイズ省の官僚との双方に取引を交わす。国民クイズ体制を維持しようとする者と崩そうとする者との間に挟まれ、ついに誰もその結末が分からないその日のクイズ番組が始まる。

国民クイズ – Wikipedia より

この本は大学の頃サークルの部室においてあった漫画で、誰が持ってきたものかは知らないが当時部室で読んでいた。その後2000年ぐらいに本屋で見かけて購入した本だが、今回の日本一時帰国で部屋の奥で埃を被ったまま置いてあるのを発見、ブックスキャン送りとなりました。

上のWikiのあらすじにあるように近未来の日本がどうも世界有数の経済国、軍事力国家となっているようで、世界の大国も日本に何も言えないというような設定(2012年の今の日本の現状と比較すると皮肉なもんだが)。「エッフェル塔ください」というような滅茶苦茶な要望なんかが簡単に実現されてしまうような世の中になっており、当然の如く国の内外からこの国民クイズ体制をぶっ潰そうといろんな思惑が渦巻いている。

ストーリーはディテールが実によく練られていて、最初は通しで国民クイズの番組構成を紹介し、主人公K井K一がクイズ省官僚の思惑と国民クイズ体制打倒の革命派の間に揺れ、そしてその後決戦の国民クイズ放送を迎えるという設定。

国民クイズの番組の間に入る政府広報のCMなどのいわゆる”おかず”も楽しい。

とか、

とか。この抽選式年金支給なんかはホントにこんなかんじになりそうで怖い。

まさに映画のようにストーリーは壮大でこの無茶苦茶な国民クイズ体制が成立した経過なども丁寧に描かれており、十分にそのストーリーに没頭できる作りになっている。ストーリーはこれ以上書かないけど、話の終わり方としては続編も全然作れる流れだと思うし、K井K一が国民クイズの司会者になる以前のストーリーなんかもドラマとしては面白いんじゃないんでしょうか。これだけのストーリーが単行本4巻(再発盤は分厚い上下の2巻構成)に収まってしまうのももったいない。20世紀少年なんか20巻以上ひっぱたんだからこの国民クイズでももっとストーリーを展開していけるんじゃないかと。当時人気があったのか知らないが、僕が読んでいた当時から今に至るまでほとんど無名の作品であるのが非常に残念。映画化なんかされても面白いとは思うが、これを映像化するのは大変でしょうな。

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