グチ文学 気に病む いましろたかし 2011年05月04日

大学の旧友がタイに遊びに来るというのでハンドキャリーしてきてもらった物。5月4日、じっくりと読んでみたが、これがもう凄いったらない。しょっぱなの文章から大変である。

本当はやる気もないのに文章仕事を引き受けてしまった。
俺は漫画家として27歳の頃から18年間、商業誌に描き続けてきたが一度もヒットはない。30歳の時に結婚して女房と共働きでやってきたからどーにかしのいでこられたとも言える。
自信はあった淡々と描き続けて作品点数を増やしていけばなんとかなるのではないか・・と割とのん気だった。
4年前に目がおかしくなって緑内障だと、診断を受けた。イヤになった。視野が徐々に欠けていく病気でシャレにならない。当然手は尽くしているが、ゆっくりと視力は失われていっている。毎日、気が重く、こわい。
仕事のペースが落ちて収入も減った。なにより気力が萎えた。誰の人生でもない。自分の人生だ・・とがんばる気持ちもあるが、どーでもいいや、くだらねえ・・とやけくそになる気持ちのほうが強い。

僕はタイまでやってきてこちらで就職し、給料もそこそこもらって日本で就職するより多分プライベートの時間も余裕がある。中々悪くない生活。多少日本語の本やら音楽、繊細な文化がこちらでは数少ないというのがデメリットではあるが、そんなに大きなものではない。つい先だってから釣りに狂ってみたり(それもいましろ先生のおかげだが)というようなこともある程度できるお金と時間がある。

しかし僕も年を取る。今でちょうど35歳、今年36歳。人間30ぐらいからほぼ明確に老いる時期に入る。頭髪、皮膚、内臓など故障が目立ってくるのもこれからの時期。僕も20歳、25歳、30歳、35歳の時期をそれぞれ考えると、確実に体力の落ちや体質の変化を実感している。

今、僕の収入を得る手段はサラリーマンとしての労働。これ一本。体が壊れてしまうと一気に生活が破綻するのは目に見える。そのようになったときの経済状況は?体調は?精神状態?将来の展望など中々想像できない状況が項目だけ思い浮かぶ。

そういうところを垣間見れるのではないかと思ってこのいましろたかし先生の「グチ文学 気に病む」を読んでみた。

この本は「釣れんボーイ」の続編である。名目としては単品の本になっているが、ここに書かれている内容をちゃんと味わうには「釣れんボーイ」を読むことをお勧めします。言い方は悪いが「釣れんボーイ」で元気だった頃のヒマシロ先生、病気をして今のご意見はこんな感じです、という内容。

「もともとやる気もないのに引き受けた」
「せこく長生きしたい」
「バイクが駐禁でレッカー移動&車はバッテリー上がりで釣行中止」

極めつけはこれ、

「400字詰め原稿用紙1枚を書くと5000円が貰えた。最初はがんばったがすぐに電池が切れた
釣り日記を書いて延々と字数を稼いでいたが、あまりにもつまらないのでなんとかしてくれ
と言われた」

あまりに露骨に記される心情にちょっとたじろいでしまうな。。ここまで書くか。。。ちょっと辛いところあれどこれを書ける(と言うか、あまりに正直すぎるほどに書いてくる)のもいましろ先生のみ。僕は一応面白いと思います。と同時に本当にいましろ先生この後に何か書くもんあるのだろうかと心配になります。。。漫画家や小説家などの書き物商売の人の最後の場所に行っちゃったんじゃないかと。。。

最後の書き下ろしの漫画はもう訳分かんないことになっちゃってます。。

とかく、まず先に「釣れんボーイ」を読むことをお勧めします。

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