クンサー – この麻薬王と知ってはならない黒い世界 2014年09月16日

Poppy Fields in Afghanistan
“Poppy Fields in Afghanistan by United Nations Photo, on Flickr”

少し前に会社の人達とミャンマーのアウンサン・スー・チーについて話しをしたことがあって、今までほとんどミャンマーの話題、政治やら歴史やらに興味をもったことがなかったなと思い、以前に買っておいてスキャンしたままになっている麻薬王クンサーの本を読んでみた。

クンサー―この麻薬王と知ってはならない黒い世界
小田 昭太郎
情報センター出版局
売り上げランキング: 196,179

今ではタイのバンコクや北部に行ってもほとんど”麻薬禍”という言葉を思い起こすこともないみたいだが、その昔タイに麻薬が溢れまくっていた(らしい)頃にゴールデントライアングルという名で有名だったアヘンの産地に、その莫大な利益を生む農産物の取引を奪い合って様々な勢力が跋扈していた。その一人であるクンサーという大将のお話。日本のテレビ局のスタッフがひょんなことからクンサーのインタビューのオファーを受け、半信半疑でタイ北部から秘密裏にミャンマーはシャン州に国境を抜け、そのクンサーの軍基地を赴いてインタビューを行い、帰路からその後までを描いた本。

それぞれの登場人物から、その経歴、言動、その裏にある意図、全てが裏社会でうごめくストリーであってなかなか裏付けが取れず不確かな話に終始しているのではあるが、あれだけ有名な麻薬地帯の元締めの大将にインタビューを敢行したことは事実のようで、その道中や過程の緊迫感や、何を信頼したらいいのかという筆者の心の揺れやらが、実に80年代のテレビ調の空気で描かれていて懐かしいVTRを眺めている気分になる。

タイの軍、警察、アメリカ、ミャンマー政府、ミャンマー共産党、中国国民党なとなど各種の団体が資金源を求めてチリチリとした勢力争いを繰り広げていて大陸らしい、まさに「勝てば官軍、負ければ賊軍」という世の政治に正義なしな真実を知らしめてくれる。世の中政府も軍も警察も、マフィアも本質的には一緒ですな。目的の前に手段は選ばずですな。

そして何かの本で読んだ通り、世界の派遣を握ることはすなわち、世界規模での麻薬の取引を握ること。直接にはやらずに、代理で取引を行うものが居て、そいつらは常に悪者だし、裏で全部の糸引いてる黒幕は常に正義の建前を振りかざす。アヘン戦争も、ゴールデントライアングルも、アフガンもすべて一緒なんだろなあ。

ミャンマーの周辺と、タイ北部はアヘン栽培というドル箱をもってたし、タイ南部はゴム農園や多分鉱物資源などのドル箱を持っていて、タイの東北イサーンにはそういうドル箱が何もない?そういう意味でイサーンてのは貧乏なイメージがあるのかね?

ミャンマーがつい最近まで軍事政権で国がなかなかまとまらなかったのは、こういうドル箱を抱えて、それを外から自由にコントロールしたい外国が単一の大きな勢力を育成させず、常に二三の勢力を均衡させ衝突させて大きな力をつけさせず、大国に歯向かえないレベルの勢力に抑えるコントロールが効いていたんでしょう。まさに仁義なき戦いの山守の組長の戦略と同じ。本質的に同じレベルなんですな。

今は多分ゴールデントライアングルは大国からもだいぶ見限られて旬を過ぎたということなんでしょうな。これからはまっとうな開発がミャンマーでも進んでいくのでしょう。

マオ―誰も知らなかった毛沢東 上
ユン チアン J・ハリデイ
講談社
売り上げランキング: 40,221

今まだ読みかけの毛沢東の一生を描いた「マオ―誰も知らなかった毛沢東」という本と並んで、世界の政治の本質を知る非常にリアルな本でぐいぐい読んでいける楽しい本でした。もう歴史の中に忘れ去られた感があり、当然ながらこの本は絶版になっているがAmazonでも古本が100円台で買えるので興味のある方はぜひ一度。