極真会館、大山倍達館長の著書、「世界ケンカ旅」であります。こちらも友人が来泰した際にハンドキャリーしてもらった一冊。しばらく積読状態となっていたが、久しぶりに引っ張り出して読み出した。
ACT1. シカゴからアイオワへ – 殺るか、殺られるか
ACT2. ラスベガスの一夜 – 静かなる技闘
ACT3. ニューヨークのギャングたち – 一万ドルの脅迫状
ACT4. 再びシカゴへ – 猛牛との一騎打ち
ACT5. マイアミでの武勇伝 – 突然の死の罠
ACT6. ブラジルの短剣使い – 凶器との争い
ACT7. 香港の拳法家 – 陳老人の”円月殺法”
ACT8. 東南アジアの足技の達人たち – ブラック・コブラとの激闘
ACT9. イランの棒術師 – びくともしない大怪物
ACT10. フランスの闘技サバット – 必殺技 “三段蹴り” の完成
解説・平岡正明
若き大山倍達館長が世界へ飛び出し、各地の格闘技家、ギャングなどと死闘を繰り広げるストーリー。語り口が非常に滑らかで映画のように読みながら風景が目に浮かんでくるのであります。
上の目次を見てもわかるとおり、アメリカから、南米、東南アジア、中東、ヨーロッパまで。実際これだけ書いてるのと、その後の極真会館の支部の多さから考えると、書かれていることが全部ホントだとは思えんが現地に実際行くぐらいのことはしてるんだろう。ちょっと変わった角度からの旅行記みたいなもんか?しかも時代は1950-60年代ぐらいのおおよその日本人が海外のことなんてまったく知らなかった時に大山館長は日本を飛び出していったのであります。
そして各地で繰り広げられるバウトともうひとつのお楽しみ、まるで大山館長は007ばりに世界各地で現地の女性と間具合って行くのであります。そちらの記述もあまり脂っこくなく、朴訥とした性格が全開で非常にほほえましい。
全編がまるで映画のような本書でありますが、実際に読んでみると、大山館長は空手を全世界に広めるために人にウケるエキシビジョンや牛との格闘なんてのを繰り返してるわけですが、この時代にテレビや映画みたいな新メディアをしっかり意識していたというのがよくわかります。その後に梶原一騎ファミリーと出会って、極真の発展を支え続けたプロデューサーを得たわけですな。血の気の多い男どもや子供に圧倒的にウケるストーリー展開が得意な梶原一騎が極真をうまく使った、というのではなく、やはりお互いにやはり求め合った結果が、空手バカ一代のマンガ、テレビ、映画で極真が爆発的に発展していった原動力なんでしょう。
しかし、この本、あとがきの解説までが非常に面白い。この人も結構とんでもない人だと思うが、平岡正明という人が書いている。
関光徳、この同じ年の左強打者の敗北は、大げさに言えば、思想的重荷になった。なぜわれわれはあと一歩踏み込めないのだろう。見えない壁の前で立ち止まってしまうのか。勝って勝って勝ちまくって、自分を解放するという方式を戦後日本は見出せないのか。おれは善戦はしているが勝利の美酒を知らないというおもいが今もあるし、これがおれの一生の限界かな、と気が滅入ることもある。
しかし、勝って勝って勝ちまくった男がいたのである。それも相手をノシしてしまうという明瞭なかたちで、世界を殴り倒した男がいた。
というわけで全力でオススメの本であります。価格が500円と安いのも嬉しい。
世界ケンカ旅 (徳間文庫) 大山 倍達 徳間書店 1985-03 |