虹色のトロツキー 2017年05月28日

安彦良和著の漫画。全然知らなかったが1990年〜1996年の作品のようです。日本一時帰国時に大学時代の友人と飲みながら先に書いた毛沢東の本のことを話していたら「ぜひこれも読んでみてください」と言われたもの。アマゾンのKindleでも買えます。全八巻。

お話は20世紀初頭の満州国での、満蒙漢韓日それぞれに混じり合い日、中、ロシアのスパイが暗躍する中の日蒙ハーフの青年のお話。以前に読んだ毛沢東本や木村政彦本で出てきた歴史上の実在の人物がいっぱい登場してきて延長線上に読んで非常に楽しめる。

いやー、戦乱の世の中、安定した統一政権がないってのは世の中こんなに大変なのかと読んでてため息が出ますな。一般市民生活のために安定政権ってのは大事ですなー。群雄割拠でどの勢力も拮抗してるなんて状態だとどこにつくのか、一回の判断が即命に関わるなんてことも多々でしょう。現状のシリア・イラクなんかもこんな状態なんじゃないかと思います。

物語はぐんぐん読み進めていけるものの、とうとつに八巻で終わる。まるで長期連載が途中で打ち切りになったかのごとく。。。主人公が本当に歴史上に実在した人物で忠実に描くとしたらそうなのかもしれないが、それにしてももう少し最後の締め方は演出してもよかったのではないかとも思う。

とはいえこの時代の人の人生はどれをとっても面白く読み物として飽きないですな。

虹色のトロツキー (1)
潮出版社/usio publishing (2015-07-31)

クール井上―いましろたかし傑作短編集 2016年07月22日

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大学生の頃に友人にいましろたかしの作品を教えてもらってから、熱心なファンではないけれど、それなりにずっとこの人のマンガを読んでます。Wikiにあるとおりな、「初期は自意識過剰な若者の空回りを、近年は脱力した30代から40代の男性が主人公の漫画を主に描く。」、そんな感じなんです。ただ、最近のマンガは50代ぐらいの男性の行き詰まり感が行間にかなり描かれるようになってきていてご本人の加齢とともにその心象を映し出してるのではないかと思っております。

80年代のハーツアンドマインズ、この時作者も多分20代、描かれる作品中の人物たちも主に20代ぐらいの青年期。90年代の後期の釣れんボーイ、これ40代男のハーツアンドマインズで、マンガの主人公はマンガ家の暇城先生で基本的にご自身であろう。この頃はだいぶお気楽で脱力、というキーワードが似合う感じではありますが、2000年代の傑作短編集(以前は「クール井上」というタイトルで販売されてた)、この辺が50代かな。

作者の加齢とともに先々への不安みたいなものが、煮凍りのように煮詰まっていく感じが如実に感じ取れますな。クール井上も10年ぐらい前に紙の本で買って読んでいたが当初はジメッとした抜け切れない空気感が読んでて辛く、あまり好きではなかったが最近Amazon見たらkindleでも出てたんで再度読んでみたらそうでもなかった。この辺は自分の年齢が向こうに近づいていってるからか??

最近のいましろ先生の作品は「原発幻魔大戦」など珍しく社会問題などをテーマに書かれてますがそれでも自分のこと50%、社会問題20%、残りの30%は読後でも「うーんなんだったんだろ?」と首をかしげるような内容で相変わらずと言えば相変わらずなんですが、個人的に社会問題を取り扱うものは歌であれ、マンガであれ、全然気持ちが入っていかないのであまり好きな作品ではありません。。現在コミックビームで連載されてる「新・釣れんボーイ」のほうがトコトコしててずっと好き。

ちなみに新世紀トコトコ節なんて短編も収録されてます。

いましろたかし傑作短編集<いましろたかし傑作短編集> (ビームコミックス)” style=”border: none;” /></a></div>
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KADOKAWA / エンターブレイン (2015-02-17)
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まんが道 Kindle版 2015年06月01日

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Amazonでなんかの本を検索してた時に偶然見つかった「まんが道」Kindle版。小学校の時に確か藤子不二雄ランドで読んだきりだからはっきり言って30年ぶりぐらいに読むかもしれない。

しかし小学校の頃結構熱心に読んだ気がするけど大学生、社会人になってそれなりに自由になる金も持って、小さい頃に見た本、マンガ、映画、音楽なんかを買い揃えたりもしていたが、ずーっとこのまんが道はお目にかかることがなかったな。って言ってもWikiとか見てると普通に2013年まで続いていたのね。

藤子不二雄 – Wikipedia
まんが道 – Wikipedia

改めて読んでみるとやっぱりようできてますな。これだけネットでいろいろ自己啓発系のサイトが溢れてて「成功するには」とか「好きな道をいく」などのトピックで論じられるポイントなんかが1970年代や80年代あたりの作品でもそれらの要素がばっちり散りばめられていて、プラス恋愛や、挑戦、挫折、努力、突破などの話の流れが青春物語で楽しい。

久しぶりにトランジスタが世に溢れる以前の社会のリアルなストーリーを見たような気がします。今ではPCが一瞬で罫線なんか引いてくれる世の中で、改めてカラス口をインクのボトルに突っ込んで画用紙に定規を使って線を引いていく描写を見てると世の中の変遷に愕然とするものであります。

カラス口 – Wikipedia
↑ カラス口、と言ってもわからない人のために。僕もマンガで出て来たら思い出せたけど映像がなければ「カラス口」と言われても思い出せなかったと思う。

現在Kindle版の9巻まで読破。止まらない止まらない。一冊432円。

まんが道(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)
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しみじみ来る – 最強伝説 黒沢 2013年08月21日

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福本伸行の漫画でこういうタイトルのものがあるのは知ってたが、今回kindleで第一巻が99円ということで安いので買ってみた。

読んでみると、ああ、身に沁みる主人公の不器用さとジャスティ感。深夜寝る前に読んでいくとホントしみじみする。5巻まで来ると喧嘩などの修羅場を切り抜けて来てだいぶ黒沢も垢抜けて(ちょっと表現違うか?)きてる感じもあるけど、ホント5巻ぐらいまでのじっとり感がはんぱなく身につまされる。いましろたかしのハーツ&マインズ松本零士の男おいどんを読んだ時のようなしみじみ感。今ちょうどバンコクは雨季だから深夜寝る前窓の外は雨の音で黒沢読みながら明日への活力を蓄えます。。

kindleでは「最強伝説黒沢」は1巻が99円、それ以降の巻は420円と第1巻はバラ巻き餌みたいなもんで、典型的なkindleの値付けポリシーですが、もう後続の巻をガンガン買ってしまってます。。。

最強伝説 黒沢 1 (highstone comic)
フクモトプロ/highstone, Inc. (2013-07-20)
最強伝説 黒沢 2 (highstone comic)
フクモトプロ/highstone, Inc. (2013-07-20)

文庫版 「スーパーくいしん坊」 2012年06月15日

実に久しぶりに牛次郎・ビッグ錠タッグのちょっと目立たない作品、「スーパーくいしん坊」を読んだ。牛次郎・ビッグ錠コンビの漫画と言えば「包丁人味平」や「一本包丁満太郎」が有名でこの「スーパーくいしん坊」は若干マイナー。とはいえ、以下のサイトでもがっつり取り上げているようにまだまだ旨みはたっぷりの作品であります。

勢いが命のグルメマンガ スーパーくいしん坊 part1:a Black Leaf

とりあえず主人公が中学生とは思えないぐらい立派な腹を抱えた中年体型、人相の悪さ、人の料理で喧嘩を売る、売られた喧嘩は漏れなく買うなど中学生という最初の設定を思いっきり置き忘れた話の展開が面白かった。そのくせ、料理の発想と言えばまさに厨房レベルのめちゃくちゃな料理法で今度は読者が置いて行かれる。「包丁人味平」なんかは連載が1973年から1977年だから、1975年生まれの僕ではこのへんはさすがにリアルタイムには読むことはできなかったが、この「スーパーくいしん坊」は1982年からの連載なのでまさにリアルアイムで読んでいた。そう、月刊マガジンだった。

本来単行本は全9巻。この文庫版は全2巻。え?入りきるのか?と考えたがやっぱどう考えても入らんよな。なんか適当に面白い話だけをセレクトしたものらしい。と言いたいところだが、内容を見てがっくり。火の玉チャーハンとか回転網焼きステーキみたいなサイケデリックなストーリー展開の話はカットされてて、まだなんとか比較的まともな話のみ採用されている。そりゃあ2巻しかないのならカットはしょうがないやろうけど、全然編集してる奴の観点がなってない。「スーパーくいしん坊」でまともな話だけ抜き出したって面白くないじゃないですか。グルメ漫画というよりはどちらかというとサイケか不条理漫画のジャンルに入るぐらいに認識してたらこういうセレクションはなかったと思うんだけど。。。ちょっと残念な結果。

スーパーくいしん坊(文庫版) 第01巻 目次
1.スタースパゲッティの巻
2.特製カレーライス!!の巻
3.名卵をもとめての巻
4.親子丼勝負の巻
5.ケーキ玉子焼きの巻
6.美味ステーキ勝負の巻(前編)

スーパーくいしん坊(文庫版) 第02巻 目次
1.美味ステーキ勝負の巻(後編)
2.ベジタブルスパゲティの巻
3.日中対抗ギョーザの巻

スーパーくいしん坊 珍味ギョーザ勝負の巻 (プラチナコミックス) スーパーくいしん坊 珍味ギョーザ勝負の巻 (プラチナコミックス)
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