世界の紅茶 400年の歴史と未来 磯淵猛 2013年09月30日

[9/365] a couple of toasts to start the day with
“[9/365] a couple of toasts to start the day with” photo by a little tune

ダイエットの一環でいろんな依存する可能性のある食べ物を一度断ってみる企画の一つで「コーヒーを飲まない」っていうのもやってたりします。そのおかげで今はコーヒーを飲まず、オフィスなどでは代用で紅茶を飲んだりしております。

タイでも普通にリプトンやトワイニング、ディルマーあたりのティーバッグはスーパーに行けばだいたい売っている。なので入手に困ることはない。

ほんでもってオフィスで飲んでいるうちにkindleのブックストアで面白そうな本を見つけた。

by カエレバ

こちらKindle版で500円。スタバのおかげでイタリアやフランス式の凝ったコーヒーの飲み方は世界中でだいぶポピュラーになったけど、大英帝国華やかかりし頃には世界でポピュラーな嗜好品といえば紅茶なんじゃなかったのかな?今のスタバの影に隠れてしまっている紅茶の魅力ってものがどう書かれているかちょっと読んでみたくて購入。

んで、読んでみるとなかなか著者の紅茶に対する博学さと、並々ならぬ愛情にため息が出る。

紅茶の歴史概略から、紅茶にまつわる風俗、産地や生産方法、紅茶にまつわる産業、ビジネス。インド、中国、スリランカと産地に訪れてその目で生産現場を見る、参加してみる。紅茶とフードの組み合わせは?ブラックティー?レモンティー?ミルクティー?アイス?ホット?ティーバッグ?ポット?などなど、ほんとに思いつく限りの紅茶にまつわるトピックが満載。

あまり、西洋料理に詳しくはなかったが、西洋の茶菓子の味わい方で、そもそも牛乳、生クリームなど動物性脂肪の摂取が多い文化の中で、それらの茶菓子との組み合わせの場合、すっきりしたブラックティー(とはいえ紅茶は緑茶みたいな無発酵系と比べるとかなり渋みなどは強いが)などでは茶菓子の脂肪の強さに紅茶が負けてしまうようだ。だからミルクティーのように、茶菓子の味を口内から一旦洗い流し次の一口への新鮮さを取り戻す働きに飲み物側に脂肪分が必要、という考え方は今まで自分の中で全く考え及ばなかった。動物性脂肪の摂取量が少ないアジア人の感覚からするとお茶には砂糖は入れても牛乳を入れるというのはあまり考えつかんと思う。
(そう考えるとインドのチャイはやっぱりアジアと中東やヨーロッパへの区切りの位置にあるんでしょう。ミルクでこってりですもん。)

最後は世に流通してる茶葉の特徴の説明がドサッとあって〆という形である。愛情があるがゆえに知りたくなる、ただその知識にこだわる訳でもなく紅茶とその紅茶を取り巻く環境や人を愛する著者の純粋な愛情が見て取れる良書。これを読んで紅茶に限らず中国茶や、茶とつくものなんでもいろいろ試してみたいもんだと思ったのでした。

二十歳の原点 – 高野悦子 2013年09月16日

以前から読んで見たかった二十歳の原点、1960年代後半の学生運動が盛んな時期に自分の母校立命館大学の学生であった女の子のいろいろな思いを綴った日記形式の物語。最後にこの子は貨物列車に投身自殺を遂げてしまう。

当然の事ながら、この当時の立命になんて自分は通ってるわけはないんだが実は自分の父親も立命出身でこの高野悦子さんが通っていた時代と多分かぶっている。なのでうちの親父に何度となく聞かされた当時の立命での学生運動の様子や70年代の京都の大学生の風俗に興味を惹かれて読み始めた。

が、やっぱり大学生って言ったって純粋無垢でモノの考え方がピュアですな。今の自分からしたら「そんなもの考えている暇がねえや」ってバッサリ切り捨ててしまいそうな自分の中にほのかに小さくうごめく思いを何度も何度もかみしめてこの人は悩む。とにかく悩む。

その真剣がゆえに逃げ場をなくした迷いにこっちも心苦しく、高校生や大学生の頃って確かにこういう気持ちを少なからず持っていたということを思い出すのであります。

30後半になったおっさんになったからこそ、「こういうことで悩まない方がいいんだよ」とさらっと言うけど、そう言うまでにある程度悩まないと答えが出ない、その途上でパンクしてしまう人もいる。そう考えながら、また「真夜中のカーボーイ」を見ている時のような「昔のともだち」にあった感がムクムクと。

だんだんとこっちも文章にはまり込んで行く感覚を覚えてきて、「あああ、重いなあ」と読みながらため息をついていた。最後どう〆るのか、気分的にかなり尾を引きそうな予感もして戦々恐々としながら読み進めたが、思ったよりは残らない幕切れ。ただ、近いうちうちに他の日記も読んでしまうだろうな、こりゃ。

ちょっとうちの親父に買ってあげてどんな反応を示すか見てみたい気もする。心情的にシンクロせずとも当時の京都で生きた世代の人ならば、荒神口のジャズ喫茶「しあんくれーる」など時間の経過に埋もれた懐かしい名前を聞いて忘れかけてた時代が頭のなかをかけめぐるかもしれない。

あと、自分は読み進めながら広小路がどうとか、寺町と西門がどうとか、地理的に??と思うような記述が多かったがよくよく考えると僕の通った衣笠キャンパスではなくて、広小路キャンパスの話だったんですな。途中まで全く気づかなかった。しかし、この「二十歳の原点」、映画版もあるらしい。が、まったくDVD化などされておらず入手不可の模様。見てみたいのう。サントラは四人囃子がやってるというから余計に興味が惹かれるが。。。

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さあ、ちょっと重かったので次はちょっとドライなアメリカのビジネス本でもよむかな。。

ウルトラマラソンマン ディーン・カーナゼス 2013年09月04日

Trusty New Balance 992's / Soggy Gooseshit Socks
“Trusty New Balance 992’s / Soggy Gooseshit Socks” photo by Nate Luzod

アメリカのウルトラマラソンランナー、ディーン・カーナゼスの著作。これもkindleで売っていたので購入。840円。先日の日本一時帰国の際に行き帰りの飛行機の中で読み切った。

いやー、この人は変態だわ。なぜこんな過酷な長距離マラソンを走るのか?というと基本答えはただひとつ、「肉体をいじめ抜いてどこまでのことができるのか??」だけ。100マイルのマラソンを走ったり、気温50度以上、路面温度90度以上になるアメリカの日陰が全くないカンカン照りの砂漠の一本道のハイウェイをふらふらになりながら走ったり、極寒の南極をスノーシューズではなくランニングシューズでフルマラソンしたり、あげくは全体300kmを超えるリレー大会のコースを一人で完走したりと「なんでそこまで。。。」と呆れるぐらいに極限への挑戦を行うドMランナー。

本を読んでいても、特定の信条、思想について書いていたり、精神世界がどうのとか、そういった記載はまったくなく、本人のこだわりは若い頃になくした妹の事。彼の信条の根幹にあるものが仰々しい大義名分ではなく、彼の生活の半径何10kmとかそういったレベルの非常に地に足をついた地味ーな生活基盤なんである。完全ヴィーガン(菜食主義者)でウルトラマラソンランナーのスコット・ジュレクなどとは大違い。スコットジュレクの場合、動物保護や健康管理上の視点から好ましいとされる菜食主義者で、ウルトラマラソンで過酷な肉体的課題を次々とこなしていって、世の中の菜食主義者のアイドルとなっている(完全菜食が菜食+肉食の通常の食生活と比較して栄養学上、健康上問題が発生しないのかというと、そこはまだ完全に答えが出ていない)。それと比べるとディーン・カーナゼスは「俺がやりたいからやる!肉体の極限までを試してどこまでのことができるか見てみたい。きっと死んだ妹も喜んでくれるはずだ。」と自分のコアに一直線。普通に職場や友達関係では思い込んだら言うこと聞かないちょっとめんどくさい感じの人なんだろうなあと夢想。でもまあわかりやすくて信用はできるかな。

しかし、本の後半この人はちょっと人道的な理由付けを覚えてしまう。「病院で臓器移植を待っているあの娘のために走る!」というような感じであります。このへんはちょっと”思い込み善意の人”っぽくなってて感情移入がしずらくなった。自分の思い込みだけで根拠もなくポジティブでそれを人に振りまいたりする人を”思い込み善意の人”と呼んでるが、よくネット上のコメントなんかでも「元気玉送ります」とか、「元気を頂きました」とか書いて得意満面になってる人が居るが、ああいうどうでもいい根拠も何もないことを発して自分は善意の人だと思い込んでる偽善的な雰囲気があまり好きでない。「いやー、書くことなかったからみんなに合わせて書いただけだよ。実際には元気玉とか元気をもらいました、とか何言ってんねん?!って感じやけど」と言ってくれる人ならいいが、真剣に「俺、良いこと書いたなあ」とか思ってる人とは話しが合わなくて困るのだ。。

ディーン・カーナゼスの例も「いやー、一応やってることが俺の場合極端だから、だいたい何かやろうとすると取材が入るじゃない?だからこういう臓器移植の提供者を探してる人達の看板役になってあげると目立って多くの人の目に触れるから何もしないより提供者が名乗り出てくれる可能性も高くなるかなと思って」とか言うのであれば至極同意なんだが、理論・根拠はなしに「あの娘のために走る!」としか書いてないから「はあ、、、」と言ってどうも気持ち的にシンクロできないのであります。

とはいえ、やっぱかなり変態的に走るにこだわったエピソードが満載でそれなりに読み応えがある。先のリレーを一人で走るなんてのも、300kmもの距離を数時間程度で走れるはずもないんだが、通常はリレーで短距離間で選手が入れ替わって走るからコース上に補給所なんて設置する必要もない。なのでこの人、食事などは自分で用意する必要があるのだが、携帯電話を持ちながら走り食事の少し前の時間になったらピザ屋に電話して「ピザ配達して!」と依頼するらしい。そして「40分ほどかかります」と言われれば「その頃には####の交差点から****方面にそう遠くにはいないはずだから交差点から走ってきてもらえば見つかるはず。」と言って持って来てもらい、なんと走りながら食ったりするみたい。なんともな変態ぶり。そうかと思えばドライブスルーで車がないからとオーダーを断られたりアホみたいなエピソードがいっぱいで楽しい読み物なんであります。

ランニング好きの人は是非。

「少年A」14歳の肖像 2013年08月15日

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何でこの本を買ったんだろうと読後にこの本を見つけた経路を思い出せないでいるんだけれども、kindleなんで多分いろいろ本を検索している間にリコメンデーションで表示されて値段が安かったからこの機会に、と買ったもんだろう。

僕が大学生の頃に起こった神戸連続児童殺傷事件。90年代のエポックメイキングな事件の一つ。個人的には世の中の流れを変えるような大事件として

宮崎勤:東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件
自然災害:阪神大震災
麻原彰晃(オウム真理教):地下鉄サリン事件
少年A:神戸連続児童殺傷事件

という事件(震災は天災だが)がとても印象に残っている。大学生当時、少年Aの事件後に悪ふざけで友人たちと一緒に事件後にタンク山に登ろうと言って深夜一時から出かけて行って真っ暗闇の中を歩いて行ったら、足元でガサガサと音がなって何か踏んだ感触があるなと思ったら、お供え物を踏み散らかしていたりと、非常に罰当たりな事をして流石に申し訳ない気持ちになり、かと言ってそんな時間にそんな場所で何をするでもなく、中途半端な気持ちで帰ってきた記憶もある。んで実家が大阪で地理的に近いこともあって妙に親近感のわく事件だった。

いろんなメディアが当時報道してたけど、改めてその経緯を読んで見たくなった。最初、何処かの新聞社か出版社の記者が取材したものをまとめたものかと思っていたがWikipediaで著者を調べてみると、ノンフィクションライターとのこと。少年Aの記述の合間合間に挿入される、著者が現地を訪れて見たその風景を描く文章が何とも小気味いい描写で少年犯罪事件のレポートでも文章力のある新聞記者が書くと多少叙情的というか感傷的になるなあと感心していたが、作家ということであった。なるほどやっぱり文章力があるのねと思った次第。

少年が殺人に至るまでの心象風景の移ろいを段階を追って細かに描いていて、少年Aについて知る、という読書の目的と著者の少年Aに対する思いや、共感や同情の念を感じて読むのが面白い作品。ただ個人的には佳作かなあ。ざっと読み通して、それほどは印象に残らなかった。。。

「少年A」14歳の肖像
「少年A」14歳の肖像

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10分で本格タイごはん 味澤ペンシー 2013年06月24日

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妹の誕生日プレゼントをアマゾンで探していてふと気づいた。タイ料理好きだからタイ料理のレシピ本がいいかも?でも食うのは好きだが作る方にも興味を持ってもらえるかどうか。。。

んで、先に紹介した本もいいんだが、「タイに1,2回来たことがあってタイ料理は好きだけど、料理の名前まで覚えてない」というごく一般の人にはやっぱりちょっと向かない。贈っても「ほとんど食べた記憶のない料理ばっかりでレシピ通り作ってもうまくできたのかどうなのかまったくわかんない」と言われそう。

なので、もうちょっと簡単で王道メニューの載っているいい本がないか見てみたところ、表題の本がアマゾンで「タイ料理」で検索すると一番にヒットしてくる。

嬉しいことにKindle版がリリースされているので、ちゃんと海外に居てても内容をチェックすることができた。

こちらの本も、日本で手に入りやすい材料を選んで書いてます、、、ってところをさらに推し進めて、ココナッツミルク、ナンプラー、カレーペーストの3つだけをとりあえず揃えれば後は普通の日本の食材で大丈夫なように書いてある。本格的にタイ料理がすきな人にはちょっとレシピが甘すぎるかもしれないけど、普通の人にはこれぐらいが敷居が低くていいんじゃないだろうか?

面白いのは、

  • カノムチーンの代用品はやっぱりそうめん
  • クイティアオでセンレックの代用できしめん!を使っている
  • ゲーン・イープンということで逆アレンジで日本のカレールーをタイの食材でタイ料理っぽくアレンジ
  • オリジナルメニュー、と書かれているヤムタコ(タコの切り身のヤム)、ヤムヘット(キノコのヤム)はめっちゃうまそう。ヤムタコは時々、タイの日本食屋で見かけることがある。確かにうまかった。

などなど。タイに居る身で読んでみると代用品のアイデアが面白く、今度実家帰ったら僕はタイの本格レシピでタイ料理作って、妹にこの本の日本式タイ料理のレシピで料理作ってもらって食べ比べなどしてみるのもいいのかもしれない。

10分で本格タイごはん
10分で本格タイごはん

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